地域移行機能強化病棟入院料 – 令和6年度診療報酬改定
告示
- 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た精神病棟を有する保険医療機関において、当該届出に係る精神病棟に入院している患者について算定する。
ただし、当該病棟に入院した患者が当該入院料に係る算定要件に該当しない場合は、区分番号A103に掲げる精神病棟入院基本料の15対1入院基本料の例により算定する。
- 当該病棟に入院している統合失調症の患者に対して、計画的な医学管理の下に非定型抗精神病薬による治療を行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合には、当該患者が使用した1日当たりの抗精神病薬が2種類以下の場合に限り、非定型抗精神病薬加算として、1日につき15点を所定点数に加算する。
- 別に厚生労働大臣が定める状態の患者については、 重症者加算 として、当該患者に係る区分に従い、次に掲げる点数をそれぞれ1日につき所定点数に加算する。
ただし、重症者加算1については、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者についてのみ加算する。
- 診療に係る費用(注2及び注3本文に規定する加算、第2節に規定する臨床研修病院入院診療加算、医師事務作業補助体制加算(50対1補助体制加算、75対1補助体制加算又は100対1補助体制加算に限る。)、地域加算、離島加算、特定感染症患者療養環境特別加算、精神科措置入院診療加算、医療安全対策加算、感染対策向上加算、患者サポート体制充実加算、報告書管理体制加算、データ提出加算、精神科入退院支援加算、薬剤総合評価調整加算及び排尿自立支援加算、第2章第1部医学管理等の区分番号B015に掲げる精神科退院時共同指導料2、第8部精神科専門療法(区分番号I011に掲げる精神科退院指導料及び区分番号I011-2に掲げる精神科退院前訪問指導料を除く。)、第14部その他並びに除外薬剤・注射薬に係る費用を除く。)は、地域移行機能強化病棟入院料に含まれるものとする。
通知
- 地域移行機能強化病棟は、当該保険医療機関に1年以上入院している患者又は当該保険医療機関での入院が1年以上に及ぶ可能性がある患者に対し、退院後に地域で安定的に日常生活を送るための訓練や支援を集中的に実施し、地域生活への移行を図る病棟であること。
- 地域移行機能強化病棟入院料を算定する日に使用するものとされた投薬に係る薬剤料は、地域移行機能強化病棟入院料に含まれ、別に算定できない。
- 当該病棟の入院患者には、主治医を含む多職種が共同して、以下の支援を行うこと。このうち、アからオまでについては、入院患者全員に行う必要があること。個々の患者に応じた具体的支援の内容については退院支援委員会で議論し、退院支援計画に記載すること。これらの支援については、必要に応じ、退院後の居住先や日中の活動場所を訪問して行う必要があること。
- 保健所、指定特定相談支援事業所・指定一般相談支援事業所の職員、障害福祉サービス事業者の職員、ピアサポーター等との定期的な交流機会を通じた退院意欲の喚起
- 家事能力や服薬管理等、日常生活に必要な能力を習得する訓練や外出等、地域生活を念頭に置いた実際的なプログラムの実施
- 退院後の医療の確保に関すること
- 通院医療機関の確保
- 訪問診療及び訪問看護の必要性の検討(必要な場合には、対応可能な医療機関や訪問看護ステーションも確保)
- 薬物療法のアドヒアランスの確認と安定に向けた介入
- 居住先に関すること
- 居住の場の検討と居住先(自宅を含む。)の確保
- 居住先等での試験外泊や訓練の実施
- 退院後の生活に関すること
- 障害福祉サービスや介護保険サービス等の利用の必要性の検討
- 後見人、補佐人又は補助人の必要性の検討
- 退院後の相談支援に応じる者の検討と確保(指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、市町村の精神保健相談員又は市町村の保健師等)
- 症状の悪化時等、トラブル時の対処方法や連絡先の一覧の作成(作成した一覧の写しを診療録に添付するとともに、患者及び家族等患者の日常生活を支援する者に交付すること)
- その他
- 市区町村役所での諸手続や居住先で必要な日用品購入等への同行
- 適切な日中の活動場所の検討
- 活動場所への移動手段に応じた訓練
- 主治医は、当該病棟入院時に、患者と面談し、当該病棟で行われる訓練や治療の内容や目的等について説明すること。併せて退院時にも、精神症状や日常生活能力の評価及び改善の可能性、退院後の治療継続の必要性について、患者に説明すること。
- 当該病棟の入院患者に対して退院に向けた相談支援業務等を行う者(以下本項において「退院支援相談員」という。)は、以下アからエまでの全ての業務を行う。
- 退院に向けた意欲の喚起及び個別相談支援業務
- 月1回以上、当該患者と面談し、本人の意向や退院後の生活に関する疑問等を聴取し、退院に向けた意欲の喚起に努めること。
- (イ)とは別に、当該患者及びその家族等の求めに応じ、随時退院に向けた相談に応じる機会を設けること。
- (イ)及び(ロ)で患者から聴取した内容や、助言・指導の要点を看護記録等に記録をすること。
- 退院に向けた相談支援を行うに当たっては、主治医、当該患者の治療に関わる者及び相談支援事業者又は居宅介護支援事業者等の当該精神障害者の退院後の生活環境の調整に関わる者との連携を図ること。
- 退院支援委員会に関する業務
退院支援相談員は、退院支援委員会を、当該患者1人につき月1回以上開催し、退院支援計画の進捗状況について検証すること。また、退院支援委員会の議事の要点を診療録等に記載すること。
なお、医療保護入院の者について、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条第6項第2号に規定する委員会の開催をもって、退院支援委員会の開催とみなすことができること。この際、「措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置について」に規定する医療保護入院者退院支援委員会の審議記録の写しを診療録等に添付する必要があること。
- 退院調整に関する業務
患者の退院に向け、居住の場の確保等の退院後の環境に係る調整を行うとともに、必要に応じて相談支援事業所等と連携する等、円滑な地域生活への移行を図ること。
- 退院支援計画の作成及び患者等への説明
担当する患者について、当該患者の意向や退院支援委員会での議事等を踏まえ、具体的な支援の内容とスケジュールを明記した退院支援計画を作成すること。退院支援計画の作成に当たっては、別紙様式6の3又はこれに準ずる様式を用いて作成し、作成した退院支援計画の内容を患者又はその家族等に文書で説明すること。退院支援計画は、退院支援委員会の議事等を踏まえ、少なくとも月に1回以上変更の必要性を検討するとともに、変更が必要な場合には変更点を患者又はその家族等に文書で説明すること。説明に用いた文書及び退院支援計画の写しを診療録に添付すること。
- 退院に向けた意欲の喚起及び個別相談支援業務
- 退院支援委員会の出席者は、以下のとおりとすること。
- 当該患者の主治医
- 看護職員(当該患者を担当する看護職員が出席することが望ましい)
- 当該患者について指定された退院支援相談員
- アからウまで以外の病院の管理者が出席を求める当該病院職員
- 当該患者
- 当該患者の家族等
- 指定特定相談支援事業者、指定一般相談支援事業者、居宅介護支援事業者等の当該精神障害者の退院後の生活環境に関わる者
なお、オ及びカについては、必要に応じて出席すること。また、キについては、当該患者の同意が得られない場合を除き、必ず出席を求めること。
- 退院を予定している患者(指定特定相談支援事業者又は居宅介護支援事業者が退院後のサービス等利用計画を作成している患者に限る。)に係る他の保険医療機関における「I008-2」精神科ショート・ケア又は「I009」精神科デイ・ケアの利用については、第2部通則5に規定する入院料の基本点数の控除を行わないものとする。
- 精神疾患を有する患者が地域で生活するために必要な保健医療福祉資源の確保に努めること。必要な地域資源が十分に確保できない場合には、当該保険医療機関自ら地域資源の整備に取り組むことが望ましい。
- 「注2」については、「A311」精神科救急急性期医療入院料の(8)から(10)までの例により、「注3」については、「A312」精神療養病棟入院料の(7)及び(8)の例による。
事務連絡
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地域移行機能強化病棟に転棟する前に、当該保険医療機関の他の精神病棟で一部の退院支援業務を開始してもよいか。
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他の精神病棟で実施した退院支援業務についても、地域移行機能強化病棟で実施した退院支援業務とみなすことができる。この場合、退院支援計画に他の精神病棟で行った退院支援内容を記載する必要があること。なお、当該病棟への入院期間が1か月未満で、退院支援委員会の開催前に退院する患者については、退院前に、退院支援相談員が、患者及び患者の家族等に、実施した退院支援の内容と退院後の医療及び相談支援の体制等について、文書で説明する必要があること。H28.03.31(その1)-85
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退院支援委員会の開催に当たり、相談支援事業者等、外部の支援者が必ず出席する必要があるのか。
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当該患者の地域移行支援を担当する事業者等が決定している場合には、出席を求める必要があること。出席を求めたものの、やむを得ず当該事業者等が欠席する場合には、診療録等に退院支援委員会の議事の要点を記録する際に、欠席の理由を記載する必要があること。H28.03.31(その1)-86