病棟薬剤業務実施加算 – 令和4年度診療報酬改定
告示
病棟薬剤業務実施加算
- 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者について、薬剤師が病棟等において病院勤務医等の負担軽減及び薬物療法の有効性、安全性の向上に資する薬剤関連業務を実施している場合に、当該患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)及び第3節の特定入院料のうち、病棟薬剤業務実施加算1又は病棟薬剤業務実施加算2を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、病棟薬剤業務実施加算1にあっては週1回に限り、病棟薬剤業務実施加算2にあっては1日につき所定点数に加算する。この場合において、療養病棟入院基本料、精神病棟入院基本料又は特定機能病院入院基本料(精神病棟に限る。)を算定している患者については、入院した日から起算して8週間を限度とする。
通知
- 病棟薬剤業務実施加算は、当該保険医療機関の病棟等において、薬剤師が医療従事者の負担軽減及び薬物療法の有効性、安全性の向上に資する業務(以下「病棟薬剤業務」という。)を実施していることを評価したものであり、病棟専任の薬剤師が病棟薬剤業務を1病棟又は治療室1週間につき20時間相当以上(複数の薬剤師が一の病棟又は治療室において実施する場合には、当該薬剤師が実施に要した時間を全て合算して得た時間が20時間相当以上)実施している場合に、病棟薬剤業務実施加算1にあっては週1回に限り、病棟薬剤業務実施加算2にあっては1日につき所定点数に加算する。ただし、療養病棟入院基本料、精神病棟入院基本料又は特定機能病院入院基本料(精神病棟に限る。)を算定している患者については、入院した日から起算して8週を限度として加算できる。なお、ここでいう入院した日とは、第2部通則5に規定する起算日のことをいい、入院期間が通算される入院の初日のことをいう。
- 病棟薬剤業務実施加算の「1」については、区分番号「A100」一般病棟入院基本料、区分番号「A101」療養病棟入院基本料、区分番号「A102」結核病棟入院基本料、区分番号「A103」精神病棟入院基本料、区分番号「A104」特定機能病院入院基本料、区分番号「A105」専門病院入院基本料又は区分番号「A307」小児入院医療管理料のいずれかを算定している患者に対して、病棟薬剤業務実施加算の「2」については、区分番号「A300」救命救急入院料、区分番号「A301」特定集中治療室管理料、区分番号「A301-2」ハイケアユニット入院医療管理料、区分番号「A301-3」脳卒中ケアユニット入院医療管理料、区分番号「A301-4」小児特定集中治療室管理料、区分番号「A302」新生児特定集中治療室管理料又は区分番号「A303」総合周産期特定集中治療室管理料のいずれかを算定している患者に対して、薬剤師が病棟において病院勤務医等の負担軽減及び薬物療法の有効性、安全性の向上に資する薬剤関連業務を実施している場合に算定する。
- 病棟薬剤業務とは、次に掲げるものであること。
- 過去の投薬・注射及び副作用発現状況等を患者又はその家族等から聴取し、当該保険医療機関及び可能な限り他の保険医療機関における投薬及び注射に関する基礎的事項を把握すること。
- 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)によるなど、インターネットを通じて常に最新の医薬品緊急安全性情報、医薬品・医療機器等安全性情報、製造販売業者が作成する医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に関する情報、医薬品・医療機器等の回収等の医薬品情報の収集を行うとともに、重要な医薬品情報については、医療従事者へ周知していること。
- 当該保険医療機関において投薬される医薬品について、以下の情報を知ったときは、速やかに当該患者の診療を担当する医師に対し、当該情報を文書により提供すること。
- 緊急安全性情報、安全性速報
- 医薬品・医療機器等安全性情報
- 医薬品・医療機器等の回収等
- 入院時に、持参薬の有無、薬剤名、規格、剤形等を確認し、服薬計画を書面で医師等に提案するとともに、その書面の写しを診療録等に添付すること。
- 当該病棟に入院している患者に対し2種以上(注射薬及び内用薬を各1種以上含む。)の薬剤が同時に投与される場合には、治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合等を除き、投与前に、注射薬と内用薬との間の相互作用の有無等の確認を行うこと。
- 患者又はその家族に対し、治療方針に係る説明を行う中で、特に安全管理が必要な医薬品等の説明を投与前に行う必要がある場合には、病棟専任の薬剤師がこれを行うこと。なお、ここでいう特に安全管理が必要な医薬品とは、薬剤管理指導料の対象患者に規定する医薬品のことをいう。
- 特に安全管理が必要な医薬品等のうち、投与の際に流量又は投与量の計算等が必要な場合は、治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合等を除き、投与前に病棟専任の薬剤師が当該計算等を実施すること。
- アからキまでに掲げる業務のほか、「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(平成22年4月30日医政発0430第1号)の記の2の(1)(③、⑥及び⑧を除く。)に掲げる業務についても、可能な限り実施するよう努めること。
- 退院時の薬学的管理指導について、可能な限り実施すること。
- 病棟薬剤業務の実施に当たっては、次の点に留意すること。
- 医薬品情報の収集、抗がん剤の無菌調製など、病棟薬剤業務の内容によっては、必ずしも病棟において実施されるものではないものであること。
- 病棟専任の薬剤師は、別紙様式30又はこれに準じた当該病棟に係る病棟薬剤業務日誌を作成・管理し、記入の日から5年間保存しておくこと。また、患者の薬物療法に直接的に関わる業務については、可能な限り、その実施内容を診療録等にも記録すること。
- 病棟薬剤業務実施加算を算定できない病棟又は治療室においても病棟薬剤業務を実施するよう努めること。
事務連絡
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栄養サポートチーム加算におけるチームの一員として登録されている薬剤師に病棟薬剤業務を実施させることは可能か。
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栄養サポートチーム加算に係る薬剤師による病棟薬剤業務の実施は不可とはなっていないが、栄養サポートチーム加算に係る業務に要した時間については、病棟における実施時間として計上できない。H24.03.30(その1)-57
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非常勤の薬剤師であっても、病棟の専任薬剤師となることは可能か。
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非常勤の薬剤師を病棟専任の薬剤師として配置すること及び当該薬剤師が病棟薬剤業務の実施に要した時間を病棟薬剤業務の実施時間に含めることは不可とはなっていないが、病棟薬剤業務が適切に行われる必要がある。H24.03.30(その1)-58
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複数の薬剤師(指導薬剤師及び1名以上の研修薬剤師)が研修の目的で病棟薬剤業務を実施した場合、その全員分について病棟薬剤業務の実施時間に含めることはできるのか。
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指導薬剤師分のみを病棟薬剤業務の実施時間に含めることができる。H24.03.30(その1)-59
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保険医療機関内のすべての病棟(区分番号「A106」障害者施設等入院基本料又は特殊疾患病棟入院料等の特定入院料(病棟単位で行うものに限る。)を算定する病棟を除く。)に薬剤師が配置されていなければならず、また、病棟単位で算定することはできないという理解で良いか。
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そのとおり。H24.03.30(その1)-60
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病棟の専任薬剤師が自ら医薬品安全性情報等の収集を行う必要があるのか。
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医薬品情報管理室の薬剤師からの情報を受けることで差し支えない。H24.03.30(その1)-62
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病棟薬剤業務の内容によっては、必ずしも病棟において実施されるものではないものであることとあるが、医薬品情報の収集、抗がん剤の無菌調製のほか、診療録の記録に係る時間なども病棟薬剤業務の実施時間に含めることは可能か。
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可能である。H24.03.30(その1)-63
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入院中の患者に対する処方せんに基づく調剤についても、病棟薬剤業務の実施時間に含めることは可能か。
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一般的に調剤に係る業務の実施に要した時間を含めることは出来ない。ただし、抗がん剤等の無菌調製は含めることができる。H24.03.30(その1)-64
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週1回の算定であるが、1泊2日入院など、短期の入院についても算定可能か。
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算定可能である。H24.03.30(その1)-65
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「エ入院時に、持参薬の有無、薬剤名、規格、剤形等を確認し、服薬計画を書面で医師等に提案するとともに、その書面の写しを診療録に添付すること。」及び「オ当該病棟に入院している患者に対し2種以上(注射薬及び内用薬を各1種以上含む。)の薬剤が同時に投与される場合には、治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合等を除き、投与前に、注射薬と内用薬との間の相互作用の有無等の確認を行うこと。」とあるが、入院基本料を算定する病棟に入院している患者全てに実施する必要があるのか。
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当該行為を必要とする人に対しては実施する必要があるが、必ずしも全ての患者に実施する必要はない。H24.03.30(その1)-66
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特定入院料を算定する病棟、病室又は治療室については、病棟薬剤業務の実施に係る取扱いはどのようになるのか。
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次のとおりである。
病棟に入院基本料を算定する患者が一部含まれている場合 病棟内に入院している患者が全て特定入院料を算定する患者である場合 特定入院料を算定する病棟 義務 努力義務 特定入院料を算定する病室 義務 努力義務 特定入院料を算定する治療室 義務 努力義務 H24.03.30(その1)-68 -
病棟薬剤業務については、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成24年3月5日保医発0305第1号)のA244の(3)に示されているが、ここに示された業務以外の業務の実施に要した時間を病棟薬剤業務の実施時間に含めることはできるのか。
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基本的には、当該通知で示された業務と解される範囲を含めるものとする。なお、病棟カンファレンスの参加及び病棟回診の同行については、「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(平成22年4月30日医政発0430第1号)の記の2の(1)の④の業務の一環であり、当該業務が薬物療法の有効性、安全性の向上に資する場合に限り、病棟薬剤業務の実施時間に含めることができる。H24.03.30(その1)-69
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薬剤管理指導記録の作成に要する時間についても、病棟薬剤業務の実施時間に含めることはできるのか。
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病棟薬剤業務の実施時間には、薬剤管理指導料算定のための業務に要する時間は含まれない。薬剤管理指導記録の作成は、薬剤管理指導料算定のための業務に該当するので、病棟薬剤業務の実施時間に含めることはできない。H24.03.30(その1)-70
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病棟薬剤業務の直近1か月の実施時間が合算して1週間につき20時間相当以上であることが算定要件とされているが、祝日等がある場合にはどのように取扱えばよいのか。また、例えば、4月1日を起点とした直近1か月の業務時間(2012年3月における業務時間)について、以下のような事例はどう判断すべきか。
事例①
第1週(1日~3日):8時間
第2週(4日~10日):20時間
第3週(11日~17日):20時間
第4週(18日~24日):16時間
第5週(25日~31日):20時間
事例②
第1週(1日~3日):8時間
第2週(4日~10日):24時間
第3週(11日~17日):16時間
第4週(18日~24日):16時間
第5週(25日~31日):28時間
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祝日の有無等にかかわらず、病棟薬剤業務の直近1か月の実施時間が合算で1週間につき20時間相当以上でなければならない。したがって、事例①は算定要件を満たさないが、事例②は満たす。
なお、事例①及び②における病棟薬剤業務の実施時間を1週間あたりに換算すると以下のとおりとなる。
事例①:84時間/月÷31日/月×7日/週=18.97時間/週
事例②:92時間/月÷31日/月×7日/週=20.77時間/週
H24.04.20(その2)-27